量子情報通信用InGaSb系正孔局在型単一量子ドット光源を実現するためには,急峻なヘテロ界面のドットを低密度で位置制御して作製する必要がある.本研究では有機金属原料分子との表面反応制御によるInGaSb系量子ドット光源の作製技術を開発することを目的とし,本年度は次の研究を実施した. ・GaAsSbサブミクロンドット上へのInGaSb/InGaAs系正孔局在型量子ドットの選択成長:TDMASbとTDMAAs原料を用いた表面反応制御によりGaAsSbドットを作製した.ドット中のAs組成は8~74%で制御でき,成長温度500~580℃で10 6 cm-2台の低密度で成長できた.サイズは直径280~460nm,高さ60~120nmで制御でき,さらにTDMASb選択エッチングで(001),{111},{110}ファセットで囲まれた等方的なドット構造に加工できた.また,S-K成長によるGaSb/GaAs量子ドットはウエッティング層からの発光が強いが,N照射して成長すると抑制できた.界面制御でドットからのType II発光を高効率化でき,さらにNラジカルを用いることで急峻なヘテロ構造が作製可能になった. ・自己組織化GaAsナノリング上のInGaSb系量子ドットの選択成長:GaSbサブミクロンドットをエッチングすると,直径400nm程度で,幅が50nm,高さが6nmのGaAsナノリング構造が作製でき,量子ドットはその(411)Bファセット位置に最優先に形成される.リング直径の制御およびそのファセット構造の改善を進めることにより,量子ドット対の距離を制御して選択成長可能になった.量子ドットをGaAsで埋め込む際は,まず400℃の低温でドット状に成長させた後,450℃に昇温して2次元的に成長することでSbの表面偏析を抑制でき,急峻なヘテロ構造によるドットの長波長発光化が可能となった.
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