・研究の目的 高性能化に限界の見え始めた集積電子デバイスの更なる発展を目指した研究が活発化している。本研究では、これらの一つであるキャリアのスピン偏極を用いたシリコンベースの新規スピン機能半導体電子デバイスの実現を最終的な目標とする。そのためには、スピン自由度でしかなしえない特徴を最大限に生かすデバイス構想や基盤技術が必要であり、真性な材料機能を発揮するための異種材料からなる高品質な人工構造がその基盤である。本研究ではこの要請を満たす「磁性体微粒子を含む酸化物ヘテロ構造の創製」をおこなう。 ・該当年度に実施した研究の成果 シリコン基板上にエピタキシャル成長が可能であると報告されているスピネル薄膜の電子線蒸着法による作製をおこなった。シリコン基板(001)を化学洗浄後に真空チャンバーに投入して、基板加熱を行った後に作製を行った。成長中の高速反射電子回折では、エピタキシャル成長を示唆するパターンが得られていたが、光電子分光法による計測を行ったところ意図した組成比から著しく異なる組成比が得られた。このことは電子線蒸着法における材料の蒸気圧の違いを反映していると考えられた。 上記の問題を解決する目的で、シリコン基板上にエピタキシャル成長が可能であると報告されているγ-アルミナ薄膜の電子線蒸着法による作製をおこなった。また、結晶成長の観点からシリコン基板(111)をもちいた。スピネルの時と同様の方法によって薄膜作製をおこなったところ、高速反射電子回折ではエピタキシャル成長を示唆する結果が得られた。光電子分光法による計測を行ったところγ-アルミナを示唆する結果が得られた。
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