研究概要 |
本年度は価数・組成を制御したBiFeO_3薄膜のイオンビームスパッタ法による作製技術と真のリーク電流測定のための測定技術の確立に取り組み,以下に示す研究成果を得た. ・Fe_2O_3及びBi_2O_3粉末をターゲットとするイオンビームスパッタ法により,Fe_2O_3及びBi_2O_3薄膜の作製条件を決定した。さらにデュアルイオンビームを用いた粉末Fe_2O_3及びBi_2O_3ターゲットの同時スパッタによりBiFeO_3薄膜を形成することに初めて成功した.その微細構造や電気的特性などの評価を行い,BiFeO_3焼結体ターゲットを用いて作製した薄膜と同等以上の品質を有することを明らかにした. ・オージェ分光法による組成・価数の精密測定をBiFeO_3薄膜に初めて適用し,Feイオンの価数を評価可能なことを確認した.その結果,Fe_2O_3粉末を原料に用いて作製したBiFeO_3薄膜においても2価のFeが存在することを見出した. ・巨大なc/a比を有するエピタキシャルBiFeO_3薄膜のHAADF-STEM観察を行い,ペロブスカイト構造がきちんと形成されていることや異相が存在しないことを明らかにした. ・AFMによるリーク電流の評価を行った結果,鉛系強誘電体とは異なり,BiFeO_3薄膜では結晶粒内においても大きなリーク電流が流れていることを明らかにした. ・BiFeO_3と同程度のリーク電流を示すPbTiO_3薄膜を用いて,リーク電流解析を行うために必要な分極処理や遅延時間等の測定条件と,各種導電機構の解析手法を確立した.
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