研究概要 |
・イオンビームスパッタ(IBS)法では,飽和したD-Eヒステリシスループを示す高絶縁性のBiFeO_3薄膜が得られるのは,正規組成であるBi/Fe=1.0からほぼ±5%以内に限られることを明らかにした.また,鉛系強誘電体薄膜に比べ,組成の自己制御性が乏しく,組成ずれが生じやすいことも明らかとなった. ・RFスパッタ法によるBiFeO_3薄膜の作製にも取り組み,組成制御により正規組成の薄膜を形成することで,絶縁性が高く飽和したD-Eヒステリシスループを示すBiFeO_3薄膜をRFスパッタ法により初めて形成することに成功した.残留分極と抗電界はそれぞれ120μC/cm^2と250kV/cmと,単結晶やPLD法やMOCVD法,MBE,IBS法による高品質なBiFeO_3薄膜と比較しても遜色なく,成膜方法によらず精密な組成制御が電気的特性の改善に必要不可欠であることを明らかにした. ・2価のFeOを原料としてIBS法により2価のFeイオンを含むBiFeO_3薄膜の作製を行い,Feイオンの価数とリーク電流の関係を調べた.その結果,FeOを原料とした場合にはBiFeO_3薄膜の絶縁性が低下し,リーク電流が増大することを明らかにした.しかしながら,AESやXPSでは,表面清浄化のためのArイオンによるエッチングによっても価数や組成が変化したため,薄膜中のFeイオンめ価数比(Fe^<2+>/Fe^<3+>比)を精密に決定することはできなかった. ・BiFeO_3薄膜のリーク電流機構の解析からは,プールフレンケル伝導が支配的であり,正規組成からのずれが欠陥とリーク電流の増加を引き起こすことが明らかとなった. ・BiFeO_3薄膜の絶縁性を向上させるためには,鉛系強誘電体薄膜よりも組成の自己制御性が乏しいことを考慮して,作製条件と組成のより精密な制御が絶縁性を向上させるために必要不可欠であることを明らかにした.
|