研究概要 |
Holographyは物体からの波面を再生するため,理想的な立体表示方法と言われている.1948年にGaborがホログラフィを発明して以来,動的ホログラムを用いた立体テレビの実現は永年の夢であった.ホログラムを用いた立体表示の最大の問題点は,1000本/mm級の高解像度と大きな画面サイズを有する空間光変調器(SLM)が必要な点にある.しかし,このような高解像度のSLMの実現は困難で,液晶やMEMSによる現状のSLMの解像度は高々100本/mm程度に留まっている.このように,十分な視域と画面サイズをもつ立体表示の実現には高分解能の動的ホログラムが必要だが,これまでのところ実現の見通しは立っていない. そこで,水平視差型の立体表示用にSLM上の複数行のピクセルで1本のホログラム走査線を構成し,SLM全体で複数のホログラム走査線を実現するようなホログラムチップを導入した.1μmの空間分解能をもつ立体表示を提案した.今年度はこの原理の権利化を主として進めPCT出願を行った. さらに,フラットパネル型立体テレビのための水平視差型ホログラムチップについて,光波伝搬によるシミュレーション実験を行った.ホログラムチップは水平視差型であるため,人間の眼の網膜上の画像をシミュレーションで求めた.その結果,立体像にホログラム走査線幅程度のぼけが垂直方向に生じることが分かった.このぼけは水平視差型のために生じ,ぼけはホログラム走査線幅程度許容されることがわかった.シミュレーション結果より,ホログラムチップの有効性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の立体ディスプレイの原理は応用上極めて重要である.したがって,今年度の検討項目の最大の課題は権利化を行うことであるが,PCT出願を行うことができたので,ほぼ当初の主要な項目は達成できたといってよい.さらに,シミュレーション実験により本提案の妥当性も確認することができた.
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