研究概要 |
暗号用乱数検定ツールとして,米国商務省標準技術局(NIST)の乱数検定が世界的に広く用いられている.NISTの検定ツールは,さまざまな検定法から構成されているが,その中で,Lempel-Ziv検定法は,ユニバーサルデータ圧縮理論に基づいた唯一の検定法であった.しかし,大きな欠点が判明し,2008年にNISTの乱数検定ツールから公式に削除され,現在に至っている。本研究では,世界的にあまり知られていないT-codeに着目し,T-codeを用いて定義されるデータ系列の複雑度指標であるT-complexityに基づいた新しい乱数検定法を確立することを目的としている.事前研究から継続して行なってきた研究により,T-complexityを用いた乱数検定法を提案すると共に,その乱数検定法がLempel-Ziv検定のような欠点が生じず,Lempel-Ziv検定の代わりとなり得ることを,理論およびシミュレーションにより明らかにした.さらに,NISTの乱数検定ツールでは検出できないような特性の悪い擬似乱数を検出できることを示すことにより,NISTの検定ツールを補完する乱数検定法となり得ることを示した.さらに,T-complexityの応用として,データの異常検出やデータの特性解析などへの適用の可能性について検討を行なうと共に,T-complexityの元になっているT-codeについて,データ圧縮への応用についても検討を行なった.
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