本研究の目的は、水晶振動子(QCM)を用いた匂い計測装置を新たに開発し、計測データに知的信号処理やガスクロマトグラフィ(ガスクロ)を用いて、匂いの基本要素の算出やその化学組成の抽出を行い、匂いの分解・合成・識別を行うとともに小型匂い識別器を作製して産業分野での異常検知、食品の品質検査などへ応用し、その有用性を定量的に検証することである。 本年度は水晶振動子(QCM)を用いた匂い計測装置を新たに開発し、計測データに知的信号処理を用いて、匂いの基本要素の算出やその化学組成の抽出を行うために、QCMセンサの作製と匂い計測装置の開発を行った。化学的知見やQCMセンサに関する知識や経験に基づき、匂い分子をQCMの表面に吸着させる超薄膜を作成し、吸着する匂い分子数によるQCMの固有振動数の変化量で匂いを計測するセンサを新たに作製した。また、金属酸化物半導体ガスセンサで、QCMセンサの識別精度を向上させるために、市販の金属酸化物半導体を購入するとともに、新たにp型半導体を用いて酸化チタンと酸化マグネシウムをクロメート処理する新たなセンサも開発した。 これらのQCM匂いセンサおよび金属酸化物半導体センサをアレイ状に多数配置した計測装置を作製した。とくに、QCNの高周波計測のために必要な電子回路をFPGAで行い、パソコンとはUSB接続でデータ転送するシステムとし、様々な匂い膜や匂いの種類に対する匂いデータベースを構築することができる状況までになっている。
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