研究概要 |
現在実用化されている光ファイバ通信システムでは,光強度のみが変調パラメータとして利用されているにすぎない。しかし最近,光ファイバ通信システムの究極的な性能限界を追求するために,情報を搬送する光電界の持つ振幅および位相情報を駆使する技術の開発が進みつつある。本研究課題では,申請者がこれまで研究を行ってきたデジタル・コヒーレント光受信器の機能を大幅に拡大し,100GHz帯域の光電界を測定する装置を開発する。これを用いて,高密度波長多重信号および単一波長超高速変調信号の光電界を解析し,位相情報を活用した新しい光伝送システムを設計するための基本データを取得することを目指す。 今年度は,単一波長のQPSK変調信号について,帯域を分割してスペクトルデータを取得し,これを用いて時間波形を合成する実験を行った。帯域を2分割し,位相ダイバーシティ・ホモダイン光回路および同期した2周波数のLOを用いて,各帯域の複素振幅の時間波形を並列に取得する。次に,これらの時間波形をフーリエ変換することにより,全帯域の複素振幅のスペクトルを周波数軸上で接続する。これをフーリエ逆変換することにより,QPSK信号の時間波形を再構築する。再構築された信号の符号誤り率の測定を行うことにより,歪なく信号が再生できることが示された。 帯域を分割する時のフィルタのスロープ特性によっては,再生された信号波形が劣化する。このような帯域分割フィルタの不完全性がある場合でも,信号等化回路により,波形の劣化を補償できることが示された。 また,時間波形の再生以外に,分割して取得したスペクトル情報を用いた種々の光信号処理技術に関して検討を行った。
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