研究概要 |
ナノスケールかつパッシブなTHzイメージング技術を実現するには,近接場プローブを計測対象の極近傍において,高速・高精度で走査する機構が必要不可欠である.そのため本研究では,以前申請者が代表した若手研究(スタートアップ平成20-21年度,課題番号:2086002)において開発した走査プローブ顕微鏡を軸として,THzナノ顕微鏡を構築し,パッシブなナノイメージングを行うことを目標としている. 平成22年度では,まず近接場プローブの作製を行い,次にプローブ位置制御機構を導入してプローブ顕微鏡の高速化・高精度化を図り,最終的にTHzナノ顕微鏡を構築した.プローブ作成において,タングステン細線をKOH水溶液で電解研磨し,先端径100nm以下のプローブ作製装置を構築し,プローブ量産体制を確立した.プローブの位置制御はシアフォース信号の振幅変調(AM)によって行っていたが,高速測定のために周波数変調(FM)の導入を計画し,FMによる位置制御をデモ機により確認した.FM変調方式は,来年度以降に本格導入する予定である.THzナノ顕微鏡を構築後は,シンプルな構造(金属のストライプなど)の標準試料上において近接場プローブを走査させてパッシブ計測を行い(波長14um近傍),空間分解能としては60nmを達成した.また近接場信号のサンプル表面からの減衰が50nm程度であることを計測したが,同時に表面から数ミクロンに渡って,定在波が観測されることを確認した.本定在波の要因は,プローブ先端とサンプル表面で散乱・反射する背景輻射であることを突き止め,理論的.実験的に解析して論文にまとめている, 本構築装置の仕様は,常温からのパッシブ計測の空間分解能が1um以上に留まっている従来法の仕様を圧倒的に上回っており,現在のアドバンテージを活かしつつ,次年度以降は応用研究を探っていく予定である。
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