研究概要 |
漏洩同軸ケーブル(LCX)を用いたバイスタティックレーダー方式の降雨レーダーの開発を行っている.LCXは特殊アンテナであり理論的に深く解析が行われていなかったため,まず三次元有限要素法を用いて,LCXの電磁界を数値計算した.その結果,LCXの周波数特性を明らかにすることができた.この結果をもとに降雨を観測する上で最も適切な周波数(電磁界のモード)を決定し,実験により降雨観測性能を明らかにすることを試みた.京都大学防災研究所にある雨水流出実験装置を用いて,理想状態で人工降雨試験を行った.その結果LCXの受信信号の差分揺らぎと一分間降雨強度との間にR2統計量が0.9以上の高い相関があることを見出し,十分な降雨観測性能があることを確認することができた.その後,より現実に近い状態で降雨実験を行うため,東京大学本郷キャンパスにおいて,長期間実降雨実験を行った.実環境ではノイズによる影響を無視することができず,信号処理を行い降雨に関する情報を抽出することにした.第一段階目として,豪雨によりLCX表面に付着する水膜の変動に伴う,信号内の不連続点を抽出した.それにより降雨の情報は大部分抽出できたが,降雨以外を由来とする不連続点が発生するという問題があった.従って信号処理の第二段階目としてそれを統計的に分析し,降雨由来の不連続点のみをさらに抽出した.これにより,強い雨,激しい雨が発生した場合は,ほぼ確実に検出できることを示すことに成功した.現在は,有限要素モデルを用いてLCX表面に等価水膜を付着させ,受信信号に降雨が与える影響を理論的に解析をしている.
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