研究概要 |
昨年度に引き続き,漏洩同軸ケーブルの電気信号により豪雨をモニタリングするべく,東京大学本郷キャンパス内の屋外において実降雨の長期計測を行った.昨年度構築した受信信号から豪雨を抽出するアルゴリズムをさらに改良して,よりロバストに豪雨を検知できるようにした.改良した豪雨検出アルゴリズムの詳細を述べる.まず,受信信号には高レベルの高周波雑音が重畳されていたため,離散ウェーブレット変換により高周波成分を除去し,低周波領域に残った豪雨由来の不連続点を抽出した.ただし,雑音由来の不連続点も同時に抽出されたため,それらを排除するために,「信号のゆらぎの大きさの閾値判定による大きな衝撃性雑音の検出」,「Lipschitz-Holder指数による連続性雑音のエッジの検出」,「パーセンタイルを用いた外れ値判定による小さな衝撃性雑音の検出」の3段階で構成される不要不連続点排除アルゴリズムを構築した,アルゴリズムを長期計測試験の結果得られた信号に適用した結果,1分間降雨強度約30mm/h以上(気象庁定義で「激しい雨」)の豪雨をリアルタイムに検知できることを示した. 本研究では次のステップとして微小降雨の検知も試みた.微小降雨は統計的に比較的降雨強度の変動が少ないため,豪雨時のように信号内に不連続点が発生しない.そのため,前述の豪雨検知アルゴリズムを適用しても検知できなかった.そこで降雨強度のマルチフラクタル特性に着目して,豪雨時の信号のフラクタル性の変化を捉えられないかと考えた.マルチフラクタル解析アルゴリズムを開発し,信号に適用した結果,微小降雨が発生した瞬間に,有意にマルチフラクタル特性に変化が現れることを示した.本結果から,微小降雨についても,ノイズに埋もれた信号から検知することができたといえる.
|