台風時などによる風倒木が発生した箇所では斜面崩壊が発生する場合がある。本研究では樹木の振動を受ける根系周辺地盤の緩みを力学特性の変化と考え、模型実験および数値実験を用いて、この力学特性の変化のメカニズムと影響因子との関係を明らかにすることを目的とする。さらに、根系周辺地盤の力学特性の変化の評価に基づき斜面崩壊の発生条件を示し、風倒木と斜面崩壊の関係を明らかにすることを目的とする。 平成24年度は一昨年度に引き続き模型実験を行った。降雨時に風によって樹木が振動した場合の周辺地盤の緩みを実物の20分の1の相似模型の振動実験によって評価した。実験では、実物の樹木の幹と根系を再現した樹木模型を作製し、樹木の水平載荷試験から模型杭と模型地盤の妥当性を確認した。樹木振動前後に小型コーン貫入試験を実施し、地盤の緩みを評価した。その結果、一昨年度の実験に比べ乾燥密度が大きく、より密な地盤ができていることが明らかになった。今年度の実験では以前より細粒分が減っていたため、締固めることにより細粒分が減る前の土よりも密な地盤ができ、載荷してもあまり変化が現れなかったのではないかと考えられる。今回用いた徳島県三好市山城町の山林の土では細粒分が少なければ、風荷重を受けた後の樹木根系周辺地盤は緩みにくいという結果が得られた。よって、樹木根系周辺地盤の緩みは密度だけでなく、粒度の影響も受けることが明らかとなり、細粒分が多い土の方が風荷重による振動によって根系周辺地盤の緩みが生じやすい可能性がある。今後はより幅広い現場の土を対象として、本研究成果を適用していく必要がある。
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