研究概要 |
堤防の基礎地盤が地震時に液状化すると、液状化した地盤が側方に流動するために堤防の沈下や大きな亀裂発生などが生じる。これまでに、堤防基礎地盤の液状化対策として、締固めや固化工法などの地盤改良により液状化の発生そのものを抑制する工法と、堤防ののり尻部に地盤固化体や矢板などを設置して液状後の地盤の残留変形を抑制する工法が開発されている。一方で、堤防自体の複合構造化については、国内外を問わず十分な研究は行われていない。これらの背景のもとで本研究では、液状化性地盤上の堤防中央部に必要最小限の壁を設けて複合構造とし、高水時における堤防としての本来の性能を飛躍的に向上させながら、地震時には液状化地盤の免震効果を積極的に活用して被害を低減する工法の効果を明らかにすることを目的として、地震時と高水時、およびこれらが複合して発生した場合における模型実験を実施した。その結果、液状化性地盤上の堤体内に矢板を設置する構造に対してL2地震動相当の加振履歴を与えても,その直後の高水時における浸透特性は,加振履歴の無い状態と比べて変化しなかった。また、矢板を支持層まで根入れさせても,浸透時に矢板下端の動水勾配が高まることによるパイピングなどの不安定現象は生じなかった。むしろ、堤体内に矢板を設置し複合構造とすることで,高水時においても矢板が天端高さを確保し堤防機能が維持され,越水時の破堤が防止されることで堤内側の被害を大きく抑制できた。さらに、実験模型を対象とした浸透解析を実施して、高水時における壁の根入れ部等での局所的な動水勾配が、離散的に計測した実験値から算定した値よりも大きくなり得ることを明らかにした。
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