研究概要 |
本研究は2009年1月に打ち上げられた国産の雲・エアロゾル衛星センサ「GOSAT CAI」データを利用して日本沿岸の赤潮の早期赤潮警戒システムの構築を目的とする.一般に赤潮が発生する沿岸は水質リモートセンシング(RS)の分野でケースII水域と呼ばれ,赤潮の指標となるクロロフィル-a(Ch1-a)の検出が難しいとされる.また衛星による沿岸のCh1-a推定は大気補正が最大の課題である.そこで本研究では,主に沿岸域の現地調査データを使って,GOSAT CAIによる高濃度Ch1-a推定モデル,エアロゾル分布推定モデルの開発,およびその現場検証を試みた.初年度は主にアルゴリズム開発を行うことを主眼においた.現地観測は,主として東京湾の3-4地点において,2010年6月~10月の間に4回分光反射率/水質調査を行った.このうち,6月,8月,9月のデータセットを使って,GOSATによるクロロフィルa(Ch1-a,赤潮の指標となる)推定の可能性を検討した.その結果,従来の反射率比による方法では,「380nmと870nmの比」とCh1-aの相関が高く,最新の大気補正手法であるLCI手法を応用した方法では,「384nm,674nm,870nmの3バンドを使ったLCI」と「Ch1-a」の相関が比較的高かった.ただし,後者の方法では,無機懸濁物質の指標となるTSSが増えると,相関が悪くなる傾向を示した.次年度では,このような問題点を克服して,実際のGOSAデータによるCh1-aモニタリングが可能になれば,主眼とする赤潮の早期警戒システムの構築ができると期待される.
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