研究概要 |
本研究は2009年1月に打ち上げられた国産の雲・エアロゾル衛星センサ「GOSA TCA1」データを利用して日本沿岸の赤潮の早期赤潮警戒システムの構築を目的とした.当該年度は東京湾において船舶から取得した分光反射率/クロロフィル(Ch1.a)データセットから,無機懸濁物質に依存しにくいクロロフィル推定アルゴリズムの検討を行った.その結果,CAIバンド1(380nm)の単バンドまたはCAIバンド2(674nm)とバンド1の比を使った場合に,懸濁物質量に関係なくChl.aとの相関が比較的よくなることが分かった.特に紫外線バンドのバンド1はMODIS等の海色センサでChl.aの吸収として使われる443nm付近のバンドと高い相関があり,CAIセンサのクロロフィル推定では不可欠なバンドとなる.ただし,CAIには海色センサが持つ550nm付近のバンドがないことが,Chl.a推定を特に難しくしていることも判明した.さらに大気捕正の観点からは,海色センサと同様に近赤外の2バンド(CAIの近赤外バンドは870nmと1600nm)でオングストローム指数を計算することによって,短い波長(380nmと670n皿)の大気補正を試みた.しかし,CAIの1600nmが非常にノイズの大きい画像となっており,このバンドの利用は非常に難しいことが判明した.最終的には比較的懸濁物質の少ない水域ではCAIによるクロロフィル推定(赤潮の指標)は可能性がある.一方,懸濁物質の多い水域では近赤外のバンド4のノイズ除去処理と緑バンドの付加がない限りはChl.a推定が難しいと判断された.今後はGOSATの後継機に前述した問題点を改善するセンサを要求するとともに,同種の様々なセンサを組み合わせて,GOSATを有効活用した水質モニタリングシステムの再構築を行いたい.
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