研究概要 |
本年度は、基礎的研究として、Hemagglutinating Virus of Japan Envelope(HVJ-E)をウイルス検出センサーに利用することが可能かどうかを検討した。具体的には、エンベロープとウイルス代替物質が反応した際にエンベロープが変形し内部に封入したプラスミドDNAを放出することの確認を行うこと、及びウイルス親和性エンベロープに提示するウイルス親和性物質の検討を行うことを目的とした。 HVJ-EとHVJ-Eに親和性のある金ナノ粒子を用い、エンベロープの変形を電子顕微鏡により確認した。粒径30nmの抗HVJ-E抗体修飾金ナノ粒子はHVJ-Eに特異的に吸着しエンベロープの変形に寄与していることが確認された。しかし、粒径10nmのシアル酸含有糖鎖固定金ナノ粒子はHVJ-Eと吸着しても大きな形状の変化を与えることはなく、このことから30nm程度の粒子と吸着した際にエンベロープが変形しDNAが放出されることが明らかとなった。さらに、HVJ-Eと抗HVJ-E抗体修飾金ナノ粒子を混合し反応させ、エンベロープの変形によって内部に封入されたDNAが放出されることを定量PCR法によって確認した。まず、HVJ-EからのDNA放出量を定量する上で必要な情報として、HVJ-Eに封入されなかったDNAはDNase処理による除去が有効であり、約4,000bpのプラスミドDNAをHVJ-Eに封入した際の封入効率は34.5%であることがわかった。エンベロープからプラスミドDNAが放出されることの確認では、HVJ-Eと抗HVJ-E抗体修飾金ナノ粒子との反応温度が20度以上場合にDNA放出比が1を超え金ナノ粒子と反応したことによるDNA放出量の増加が確認できた。特に反応温度40度においてDNA放出比が最大となることが明らかとなった。
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