ウイルスによる水系感染症が特に開発途上国において深刻な問題となっている。本研究の最終目標は、開発途上国においても簡易に水中病原ウイルスを定量できるウイルスセンサを開発することにある。ウイルスの検出にはウイルス吸着タンパク質(VBP)と蛍光分子(fluorophore)を用いる。研究期間内には、(1)fluorophoreの合成、(2)ノロウイルスに特異的なVBPの精製、(3)VBPのガラス表面への固定、を行う。 本年度はfluorophoreの合成に成功した。さらには、ノロウイルスに特異的なVBP(NoVBP)の精製に成功した。NoVBPを合成する遺伝子組換大腸菌を培養し、その菌体内から蛋白質を抽出し精製した。精製された蛋白質がNoVBPであることをSDS-PAGEにて確認し、透析および濃縮を行った。濃縮後にNoVBP濃度をLowry法に基づいて測定した。NoVBP濃度は約70μg/mLであった。 VBPをガラス表面へ固定することに成功した。タンパク質固定化はアミンカップリング法にて行った。金薄膜が蒸着されたガラス板を購入した。金薄膜上に0.01Mの11-メルカプトウンデカン酸のリン酸緩衝液を100μM滴下した。これにより金薄膜上にメルカプトウンデカン酸の自己集合膜(Self-Assembled Monolayer : SAM)が形成される。SAMを用いることによりタンパク質をガラス表面に単分子固定することができる。次に、メルカプトウンデカン酸のもう一方の末端基であるカルボキシル基を、1-エチル-3-(3ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を使って、N-ヒドロキシこはく酸イミドのエステルとした。活性化カルボキシル基にタンパク質を含むリン酸緩衝液を滴下し、タンパク質を固定することに成功した。
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