主要解明結果は以下の通りである。 1)海水中における貝殻の溶解速度を、貝殻を有明海の佐賀県六角タワーにて海水中に設置して測定した。ほぼ2か月ごとに回収し、当初との質量変化を測定した。その結果、6ケ月で5%減少した。このことは、貝殻の成長線を殻頂付近で読み取ることが困難になる可能性のあることを示している。 2)種名、死亡年月日、採取場所(有明海)が明確な貝の殻の ^<14>Cを測定したところ、かなりのばらつきがあり、生存年代を推定するには誤差が大きかった。大気中の二酸化炭素の海水への溶解と外洋水との混合、貝による炭酸イオンの摂取について、さらなる検討が要ることが判明した。 3)貝殻の成長線の間隔を読み取る手法を確立しえたが、成長線そのものが縞状を呈したり、貝殻の厚さ方向に不連続的になっていたりする上に、殻頂付近では外殻が溶解し読み取りに限界があった。このことは成長線が生じる機構を解明し、それに基づいて成長線数を日にちに換算する必要があることを示している。 4)同一種の貝の成長速度(成長線の間隔)と水温や時化による摂餌停止の影響との関係性には、やや関係性を見出すことができた。成長線が生じる機構を解明することができれば、この問題はかなり解決されることになることが明らかになった。 5)成長に関する水温の影響が異なるアサリとサルボウを比較しようとしたが、サルボウの成長線が明確に読み取れなかった。そのため、食用に供されていない成長性の読み取りやすい種を利用することにした。
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