貝の成長線を用いて過去の水域の貧酸素発生状況等の水圏事象を推定できるようにすることを目的とした。貝殻の^<14> C比率による貝が生存していた年代推定は、^<14> C比率のばらつきが大きく精度が十分でなかった。この結果を受けて、死亡日の確定している貝を用い、生存期間を対象に成長線間隔を利用して、水圏事象を推定することを試みた。まず、貝殻は成長過程に外殻が溶解することがあり、成長線は腹縁側でしか読み取れないことが明らかになった。さらに、アサリの成長線は既往研究の日輪ではなく、少なくとも2本、それより多いこともあることが判明した。しかしながら、成長線分布は水象とかなり関係があることが示されたので、その利用法の確立は可能性が高い。成長線の発生機構の解明、死亡年代の確定手法の確立が今後の課題である。
|