都市部では夏期に多発する集中豪雨による都市型洪水の発生が懸念されている。建築の側からの都市型洪水の緩和手法として、建物の屋上に一時的に雨水を貯留し、時間をかけて都市排水インフラへ流出させる方法が考えられる。そこで本研究では、屋上を排水調整装置としての積極的活用手法を検討することを目的とし、具体的には屋根面に一時雨水を貯留させ、その後能動的に雨水を排水させる手法について検討を行った。 まず、都市型洪水発生時の降雨挙動を、気象庁等の過去の記録より調査した。その結果、降雨波形として前一波型、後一波型、二派型の三種類に分類にされること、また、降雨強度として、8.3mm/10分以上の降雨の場合、現行の都市下水道排水量基準では都市型洪水の発生する可能性があることを示した。 屋根面に貯留した雨水を適切に排水させるための、電動バルブを用いた手動開閉式の排水システム及び、一定雨量が降った際に自動的に開閉するセミパッシブ排水システムをそれぞれ試作した。この排水口を、実際の屋根の1/10を模擬したモデル屋根試験体の排水口に設置し、先に調べた都市型洪水発生時の降雨を与えた時の、試作したシステムの最適な排水制御について検討を行った。また、この考え方を陸屋根面積が多いと思われる、丸の内地区の街区単位に適用し、降雨時の街区からの排水量を試算し、都市型洪水防止のための最適な排水設計について検討を行った。その結果、これらの試作した排水システムにより、都市型洪水緩和に貢献できる可能性を示した。
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