研究概要 |
本研究は,地震による超高層建物のエレベーター被害を低減するため,これまで別々に設計されていた建物の制振装置とエレベーターロープの制振装置を協調的に制御することで,制御性能を飛躍的に高めることを目的としている。 本年度はまず,シミュレーションにより建物・エレベーター同時制御の特性を明らかにするため,高さ240mの超高層建物・エレベーター連成系モデル,アクティブマスダンパーによる建物制振装置とアクチュエータによるエレベーター制振装置のモデルを構築した。 構築したモデルに対して,最適レギュレータ理論に基づく建物・エレベーター協調制御手法を立案し,El Centro,Taft,Hachinoheの標準3波、告示波、2004年新潟県中越地震K-NET新宿観測記録を入力地震動として用い,時刻歴応答解析を行った。エレベーターロープの応答特性について,非制御,利己的完全分散制御,利己的部分分散制御、利他的部分分散制御、協調的部分分散制御、建物応答低減を目的とした集中制御、ロープ応答低減を目的とした集中制御、建物とロープの双方の応答低減を目的とした集中制御の間で比較し,応答特性を分析した。その結果、建物の変位応答は制御手法間の差異は大きくなく、一方、ロープの応答は協調的な制御やロープ応答の低減を目的とした制御で良好な性能を有していることを確認した。 次に、次年度に行う振動台実験のため,上記で構築したモデルにもとづき,時間スケールを1/10に縮小した建物縮小試験体,建物制振装置,エレベータ縮小試験体,エレベータ制振装置の設計と製作を行った。自由振動実験を行い、設計どおりのモード特性が得られていることを確認した。
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