本研究は,長周期地震動による超高層建物のエレベーターロープの引っ掛かり事故等の被害を低減するため,これまで別々に設計されていた建物の制振装置とエレベーターロープの制振装置を協調的に制御することで,制御性能を飛躍的に高めることを目的とする。 平成24年度では、システムの状態量を推定するオブザーバーに試験体の加速度センサーに対応したカルマンフィルターを採用し、外乱包含によるフィードフォワード制御を導入した制御則を組み込んだ建物・エレベーターロープ連成系の試験体を用いた振動台実験により、提案手法の有効性の検証を行った。エレベーターロープの引っ掛かり事故が見られた超高層建物の近傍で観測された地震動ならびに設計用入力地震動(告示波)を用いて振動台実験を行い、提案手法により建物とエレベーターの双方の応答が低減できることを確認した。 また、線形二次ガウシアン(LQG)制御を用いた協調制御のパラメータ設計に関して、シミュレーションによりパラメータとシステムの応答の対応関係を分析し、LQG制御の評価関数と制御特性の関係を明らかにした。得られた知見は協調制御系の設計に役立つものと考えられる。 そして、対象をより一般的な振動システムに拡大し、振動制御装置を有する免震床上にコンピュータサーバが設置された建物の制振装置を備えたデータセンターの事例についても検討を行い、効果的な協調制御ができることを確認した。 研究成果は国内学会の口頭発表のほか、査読付き論文発表や国際会議のポスター発表などを行った。
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