研究概要 |
空気中よりも音波の伝搬速度が遅くなる特性を持つグラスウールやロックウールで代表される多孔質材料中に音波が入射した場合に、音波屈折が予想されるがこれまで検証例がなく、軽量2重壁への多孔質材挿入効果のモデルも確立されていない。この状況に対し、一軸指向感度特性を有する粒子速度センサーを利用して実態解明することを研究目的とした。 まず、床面にグラスウール(密度32kg/m^3)を厚く積層配置して、試料から1m程度上部に5個のスピーカを離散配置して垂直条件から水平条件まで10度程度の間隔で音波を空気中からグラスウール試料へと斜めに入射させ、試料表面から0(試料無),25,50,75mm下部にセンサーを直交2方向ごとに配置、2次元伝搬特性を観測して、各成分ごとの伝搬強度と音波の進行方向を分析し、試料の無い場合と比較して屈折現象の有無を検証した。 得られた結果の主なものとして、5スピーカ全駆動による疑似平面波入射と1個のみ駆動した点音源入射とも、水平成分の方がより減衰する傾向があり、音波は法線方向に近づくように進行方向が変化、光と同様に屈折現象が低い周波数から高い周波数まで認められ、例えば水平に近い80度入射の場合でも60度方向に進む結果が確認できた。グラスウール内の音波伝搬に伴う減衰は周波数が高い程、入射角度が水平に近いほど減衰が認められた。試料厚さが50mmで2kHz程度の周波数では垂直入射で数dB、80度入射条件で10数dBの減衰が認められ、軽量2重壁中空部へのグラスウール挿入効果はこの減衰値程度と想定できる。また、音波が板材料とグラスウール層を透過して透過側の2枚目へ到達するとコインシデンス周波数は高い側に僅かつれる効果も加わり、コインシデンス効果による遮音低下が抑制され、見掛け上の遮音性能向上効果も加わる様に推測される。これらの考察から定量的モデルの構築が期待できる。
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