音波の伝搬速度が空気中よりも遅いグラスウールやロックウールで代表される多孔質材料へ音波が斜め入射した場合には音波屈折が予想されるが、これまで検証例がなく、軽量2重壁への多孔質材挿入効果の定性的定量的モデルも確立されていない。この状況に対し、一軸指向感度特性を有する粒子速度センサーを利用して実態解明することを研究の目的とした。 空気中から積層したグラスウールへ音波を入射させ、粒子速度センサーの指向感度を水平・垂直の直交2方向に向けて音響観測して屈折現象の生じることを確認してきた。ただし、屈折後の音波が透過側板材料に生じるコインシデンス効果やグラスウール付加による減衰の影響を正確には把握できなかった。屈折で垂直に近づく伝搬でもコインシデンス周波数の移動の有無について確証が得られない原因は、代表的な石こうボードのコインシデンス効果のピーク周波数が鋭くないと判断し、本年度は顕著に振動励振されるガラス板を対象に変更した。水平配置のガラス板上の強く励振される周波数を質量負荷が無視できるレーザー振動計を用いて把握する実験を行った。この結果、4mmガラス板に音波が水平入射した場合、理論コインシデンス周波数の2880Hzに対して、3100Hzに励振振動が観測され、さらにガラス前面をグラスウールで覆うと3500Hzに励振振動が移り20dB程度の振動の減衰低下が観測された。これは、グラスウールの複素伝搬定数の観測値から屈折角やその角度方向での伝搬減衰値を推定した結果と概ね対応する。すなわち、グラスウールを透過後にコインシデンス周波数はやや高周波数側に、付加搬減衰は屈折後の斜透過方向の減衰と推定できると示唆された。以上によりコインシデンス効果による遮音低下は多孔質材料の挿入により抑制され、見掛け上の遮音性能向上効果も加わる様に推測される。これらの考察から軽量2重壁の定量的モデルの構築が期待できる。
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