本研究は、金属/絶縁体/金属(MIM)接合中における量子論的電子トンネル現象を基本原理とした材料中、なるいは材料表面の特性制御を目指す。より具体的にはホットエレクトロンを表面素過程の駆動力として用い、その制御を行うための金属・絶縁体・金属トンネル流説号の作製と、上記制御のための最適条件を明確化することを目指す。トンネル効果を利用した電子デバイスの一つであるMIMトンネル接合に対して電圧を印加すると、上部電極表面にホットエレクトロン(HE)と呼ばれるフェルミ準位よりも高いエネルギー状態にある電子が到達する。本年度は、Ag電極表面に吸着したパラニトロ安息香酸(PNBA)のバイアス電圧印加による変化を表面増強ラマン散乱(SERS)法により検討した。 真空蒸着装置を用いAg/AlOx/Alトンネル接合を作製した。各電極の膜厚は水晶振動子法により評価した。PNBAはスピンコート法を用いて上部電極表面(Ag)にを吸着させた。 トンネル接合に電圧を印加しHEを上部電極表面に作用させると、未反応の吸着PNBA分子のイオン化が促進される。さらに還元カップリング(RC)反応によりアゾ化生成物の生成を示唆するラマンスペクトルに変化する。このとき同時にPNBA分子自体に起因するラマンバンド強度が減少し、分子が分解することがわかる。Agの表面プラズモン振動数に対応する電圧は2.6Vであり、トンネル電流はファウラーノルドハイムトンネルにより2.3Vから急激に増加する。以上から、Ag電極上ではHEがSPPを励起しその結果PNBAのRC反応が促進されることを推定した。
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