本研究では3年間の研究期間中に、金属をMとしてM膜→M(OH)_x→MO_x→透明導電膜の反応の流れを実現することで、特に"大気圧下で非平衡励起した水蒸気"を用いてドーパント元素を固溶した合金膜を気相中で水熱・酸化処理し、透明な導電膜を創製する新規プロセスの提案・実証を目的としている. このためにH22年度は本科研費により、酸素ガス混入可能な過熱蒸気ジェットの発生装置を作製した.これを用いて金属Alスパッタ膜の水酸化を試みた.しかし一様な膜改質が困難であることが分かった.つまり、乾燥水蒸気では膜全体の水酸化は進行せず、湿った水蒸気の凝集による液滴の水が存在するときにのみ、はじめてAlの水中の水熱反応による水酸化で特徴的な、反射率低減に有効な膜構造(光学的には傾斜屈折率構造)が形成されることが明らかとなった.そこで、一旦、水中で水熱反応を施したベーマイト膜の過熱蒸気による改質を試みた.その結果673K以上で酸化反応が進行し、γアルミナに部分的に改質されること、さらに酸素を混入した過熱水蒸気により、γアルミナの結晶性が向上することが分かった.これらの結果における膜評価は透過型電子顕微鏡による制視野回折、FT-IRによる赤外線吸収スペクトルにより行った.特にIR透過スペクトル測定においては基板の検討を行った.また、ドーパントの元素を検討するための予備実験として、ZnとAlの2層膜及びMgとAlの多層膜をスパッタ法により形成し水熱反応を実施した.そして、それぞれが水熱反応により、透明化する事実を確認した.
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