本研究では3年間の研究期間中に、金属をMとして M膜 → M(OH)x → MOx→透明導電膜 の反応の流れを実現することで、特に“大気圧下で非平衡励起した水蒸気”を用いてドーパント元素を固溶した合金膜を気相中で水熱・酸化処理し、透明な導電膜を創製する新規プロセスの提案・実証を目的としている. 平成22年度に行った過熱蒸気、乾燥水蒸気による金属Al膜の完全な水酸化は困難で、むしろ水酸化後の膜の表面形状を維持したままγアルミナへの改質ができる事がわかった。そこで、平成23年度はさらに合金膜への適応をするために、Mgの低温水反応による膜の溶失を抑制して水酸化物膜への改質できることを確認し、またZnとAlの多層スパッタ膜を形成し水熱反応を実施し、透明化を確認した。 これらの結果に基づいて、H24年度は、先ず固溶体合金膜を成膜し透明化と導電性について検討した。Zn-Al合金膜では水熱反応により高い透過率を実現できたが導電性は確認できなかった。Zn-Mg合金膜では透明化と導電性を確認できた。Ag-Mg合金膜ではMgが溶失しAgナノ粒子膜が形成された。一方、水プラズマに関しては誘電体バリア放電型プラズマと走査可能なプルーム型プラズマの二種類の方法で膜改質を検討した。前者の方法の膜改質は非一様で、後者は相対的に一様に改質可能であるが改質可能膜厚が限定的であることがわかった。 以上の結果、飽和水蒸気、過熱蒸気では水酸化物膜の脱水による改質が確認され、また合金膜の水熱反応では透明導電膜創製の可能性が示唆された。大気圧プラズマを用いた膜改質では改質可能であるものの一様膜形成には更なる工夫が必要であることがわかった。
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