スピノーダル型相分離により自己組織化的に二相連続構造が形成される両相ならびに界面の電気物性・半導体的特性の制御を目的として、代表的なスピノーダル総分離型酸化物セラミックスである酸化スズ(SnO_2)-酸化チタン(TiO_2)系の相分離構造化・組織形成機構解明および電気的性質について検討した。 相分離形成添加物としてこの二元系に鉄(Fe)を微量添加して反応焼結法により試料を作製した結果、未添加の一般的なSnO_2-TiO_2系でのスピノーダル相分離プロセスとして既知の均一固溶体形成・熱処理を経ることなく、一段階の反応焼結によりラメラ組織を伴うスピノーダル相分離構造が形成されることを見いだした。組織発達はFe添加量に加え、焼結温度・時間により制御することが可能であり、焼結温度1360℃程度からラメラ組織発達が開始されること、この段階では初めにSnのTiO_2相への選択的拡散により同相粒子内にラメラ組織が発達し、次いで温度或いは時間経過によりSn、Ti両元素が相互拡散して1450℃程度で均一なラメラ組織へと発達することを見いだした。こうした現象は微量のFe固溶によりSnO_2-TiO_2スピノーダル相分離二元系の溶解度ギャップの高温側へのシフト、ならびに構成元素濃度揺らぎの促進により生じることを解明した。更に、こうしたFe添加により誘導されたラメラ組織を持つ材料の電気伝導率は組織に強く依存し、完全なラメラ構造が形成した場合、複合構造体は半導性を示すことを明らかにした。
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