自然界には存在しえないとされていた分子様結晶である遷移金属過酸化物/超酸化物(金属酸素化物)を人工合成することを目指し、その特異な表面・バルク特性の機能材料への応用展開を目指した。金属酸素化物が実現すればイオン間静電相互作用がイオン結晶並みに強い特異な分子結晶になりうる可能性を秘めており、その結晶構造・基礎物性データの蓄積が進めば分子性酸化物結晶という新規物質群を学会に提供することになる。 23年度までの成果で新規過酸化物の合成が効率的に行えなかった事実を鑑み、24年度後半より(O-O構造だけではなく、炭素原子による類似の分子様クラスター構造(C-C)構造を含む化合物Re2C2Cl2(Re希土類元素)を新規に合成・物性評価を試みた。Y2C2Cl2化合物はその粉体合成には成功しX線回折により確認した。しかしながら、その多結晶体にあっても空気中で安定に存在せず、物性の評価は困難だった。 バルクにおいて生成に成功しなかった過酸化物イオンであるが、光照射による生成にはその可能性が見いだされた。酸化物半導体界面において、紫外光照射下での難反応性有機物の反応活性の評価を通じ、励起状態分子から励起状態酸化物表面への自発的電子移動がおこり、界面抵抗の変化をうながす機構が解明され、その化学センサー素子への応用展開が行なわれた。本年度は走査トンネル顕微鏡の技術を応用し、ナノメータースケールの空間を通過するトンネル電流に対する雰囲気ガス分子の効果を評価した。ZnO単結晶表面へ先端が1原子の酸化物半導体探針を用いてのトンネル接合を形成しの原子レベルのZnO表面構造分析の結果、ZnO表面でアルコール分子の分子鎖長に依存する表面準位の検出に成功した。酸化物半導体界面の化学的活性状態の実現とその制御へ向けての基礎情報が得られた。
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