研究概要 |
本年度において、溶出(リーチング)処理による非平衡相の形成の普遍性を検証するために、種々のAl合金系について調べた。 1)Cu-Ir系:複雑な構造をもつAl_<70>Cu_<20>Ir_<10>金属間化合物(近似結晶)を前駆物質として、アルカリ溶液によるリーチングで、CuとIrが互いに固溶した単一なfcc相が形成された。状態図上、Cu-Ir系は液相では溶け合うが固態では非固溶系であるので、Cu-Irを溶解して液体急冷を施してもfcc-Cuとfcc-Irのからなる2相組織になっている。一方、予めAl-Cu-Irの3元化合物を作製してから、リーチングに際しでAlの選択溶出に伴うCuとIr原子の最配列が生じ、結果的に非平衡状態のCu-Ir固溶体が形成された。リーチングというプロセスを経由することで、液体急冷が到達できない非平衡状態を作り出せることが分かった。 2)Pd-Ni,Pd-Co系:Al-Pd-Ni,Al-Pd-Co合金に於いて種々の組成において、液体急冷状態では2次元準結晶が形成されたが、アルカリ水溶液によるリーチングで、極めてブロードな粉末X線回折ピークに特徴づけられるPd-NiとPd-Coナノ合金粒子の形成が確認されている。現在、リーチング後の組成をICP分析することで、組成を調べるとともに、液体急冷によるこのようなナノ合金粒子の形成の有無を確認している。 来年度において、今年度作製された非平衡相とナノ合金粒子の触媒および水素特性を調べることにしている。一方では、このような非平衡相の形成メカニズムについてエントロピーの変化から検討する。
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