本研究では、現在、未利用エネルギーの活用として波浪エネルギーや人間の踏圧エネルギーなどの利用が検討されている。これらを電力変換する方式の一つである、応力-磁気の結合を誘導法により電力変換する「逆磁歪発電」に注目し、全く新しい原理としての磁性1次相転移の利用を提唱する。 本年度は、材料探索としてLa(Fe_xSi_<1-x>)_<13>化合物に注目した。本化合物はFe高濃度側においてTcでの強磁性-常磁性1次相転移が発生し、急峻な磁化変化が発生することが確認されている。圧力効果により相転移を誘起することが本テーマの主眼であるが、磁化変化の急峻性は誘導起電力を増大させる一方で、磁化変化発生に要する応力の閾値Pminが先鋭化するため、Pmin以下の応力を変換に使えない。磁化変化を緩やかにすると、起電力は減少するが、変換にかかる応力範囲が広がる。これまでの研究からは、Fe濃度を減少させたときに、相転移の次数が1次から2次に変化する臨界濃度はx=0.86近傍と判明している。そこでまず、x=0.86近傍の組成の化合物について、Tc近傍における磁化の温度変化を算出し、圧力を印加した場合の変化について評価した。その結果、x<0.86およびx>0.86の試料ではそれぞれ2次および1次の転移モードに変化は生じないが、x=0.86では圧力増加とともに1次相転移の性質が強まり、磁化の温度変化が急峻になることがわかった。この結果を換算すると、0.2T/MPa程度となり、標準体重が片足爪先にかかった場合に約1T程度となり、比較的大きな誘導起電力が期待できる。なお、23年度には材料デザインの検討を繰り越し課題として実施した。
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