本研究グループは、金属ガラスには、通常の金属結晶には存在しない特殊な中距離領域構造が存在すると考えている。そのような原子配列は、(1)金属ガラス組成近傍にある"金属ガラス近似結晶相"の探索とその結晶構造解析。(2)環境構造RMC解析による金属ガラスの3次元構造モデルの導出。以上2つの研究タスクの完了によってはじめて解明できると考えている。 本年度は、Zr-PtおよびZr-Pd系非晶質合金に関する近似結晶相の探索と非晶構造解析および関連する近似結晶構造と非晶質構造を比較検討するための、ボロノイ多面体解析ソフトの開発に力点をおいて研究を遂行した。さらに、Zr-Al-Cu系金属ガラス相の構造解析を実施した。 本グループが開発したAXS-RMC解析によって、2元系Zr基金属ガラスの構造は、構成元素の原子半径に支配されることが判明した。したがって、正20面体局所構造は、これまで考えられていたように特殊な合金系で生ずるのではなく、金属ガラスに共通な局所構造であることが明らかとなった。同時に、これまで指摘されていた準結晶の形成は、混合エンタルピーの小さな原子組み合わせから構成される正20面体局所構造がキーポイントであることも議論できた。さらに、Zr-Al-Cu系金属ガラスにおいては、ZrおよびCu周囲の局所構造は、2元系金属ガラスと同様な傾向を示すにもかかわらず、第三元素であるAl周囲の構造は大きく異なることが明らかとなった。本研究プロジェクトは、この局所構造の差異がバルク金属ガラスの安定性に大きく影響すると判断している。
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