研究課題/領域番号 |
22656154
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
春日 敏宏 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (30233729)
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キーワード | 燃料電池 / ハイブリッド / プロトン伝導 / ナノ粒子 / 有機分子 / イミダゾール / ベンゾイミダゾール / プロトンダイナミクス |
研究概要 |
本年度は、リン酸亜鉛ガラス/ベンゾイミダゾールハイブリッド材料(ZPG/BIm)、およびリン酸ジルコニウム粒子をZPG/BImに分散した材料(ZrP-ZPG/BIm)の構造評価と燃料電池特性ついて検討した。 熱分析結果より、ZPG/BImは、中温域において粘稠性物質であり、200℃程度までの熱安定性を有する材料であった。FT-IRスペクトルおよび^<13>CMAS-NMRスペクトルより、試料中にはZn^<2+>イオンと結合しているベンゾイミダゾールとのクラスター、またベンゾイミダゾール同士で水素結合を形成しているクラスターが存在していることがわかった。さらに、^<31>P MAS-NMRスペクトルにおいて、試料中にはオルトリン酸やピロリン酸が存在しているおり、このリン酸グループがプロトン伝導に寄与していることも明らかになった。160~190℃で試料中のピロリン酸とベンゾイミダゾールとのクラスターを主にプロトン伝導が起き、190~230℃においてはオルトリン酸とベンゾイミダゾールのクラスター、さらにはベンゾイミダゾール同士のプロトン伝導が主に起こっているのではないかと考えている。 ZrP-ZPG/BImは、塑性変形を有し、プレス成型することにより厚さ150μmの膜状に成型可能であり、160℃程度までの熱安定性を有する材料であった。試料中にはα-Zr(HPO_4)_2・H_2O粒子(13nm)が生成していた。^<31>P MAS-NMRスペクトルから、試料中のオルトリン酸は周囲のクラスターによって束縛された状態をとっており、^1H MAS-NMRスペクトルから、リン酸ジルコニウム粒子表面のP-OH基由来のプロトンが豊富に存在し、ベンゾイミダゾールと水素結合を形成していることが想像された。リン酸ジルコニウムナノ粒子添加により、電導度が大幅に向上し、活性化エネルギーの低下が見られた。現在、伝導機構の解明について検討を続けている。MEAを作製し、単セル酸水素燃料電池として評価したところ、最大出力は150℃、無加湿において、約111mW/cm^2を示し、高い特性を有していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン酸亜鉛ガラスとイミダゾール系有機分子を反応させて得られるハイブリッドゾルをマトリックスとし、表面にプロトンを多量に配備する無機ナノ粒子を多量に分散させる方法をほぼ確立し、電導度の飛躍的向上を見いだせたことは大きな成果であると自己評価している。ただし、本年度当初に計画した,耐水性についての評価が進んでいないため、(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)中温域・無加湿で高いプロトン伝導度を示す構造の構築 プロトン移動距離や滞留時間などを推測し、プロトン伝導機構を完全解明する必要がある。ガラス組成がハイブリッドの電導度に及ぼす影響、リン酸水素ジルコニウムナノ粒子との複合化に最適な配合比率を最終決定していく。 (2)熱安定性・耐水性の検証 燃料電池として稼働させた場合のMEAの耐久性が十分確保されているかを確認する。現段階では結晶の安定性から160℃を上限としてきたが、耐熱性向上が期待できる分散ナノ粒子の探索も継続しなければならない。
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