まず酵素を固定するナノポーラス金属基板創製のために、金属表面にナノポーラス構造を構築する手法を確立した。Au板表面にAg箔、Pt板表面にCu箔を積層して熱処理を行うことで表面を合金化し、そこからHNO_3あるいはH_2SO_4中での電解(もしくは自然腐食)によりAgおよびCuを溶解除去した。この手法により、孔径5~50nmのナノポーラス構造をAuおよびPt板表面に構築した。表面積をAuで約90倍、Ptで約170倍に拡大できたことが、H_2SO_4中でのサイクリックボルタンメトリ測定により明らかになった。 次に、汎用性の高いナノポーラスAu上に酵素を固定した。酵素としてラッカーゼを用い、固定はラッカーゼを含む緩衝溶液中に孔径約40nmのナノポーラスAuを保持することで行った。この際、自己組織化単分子膜(SAM)により修飾したナノポーラスAuについても同様の処理を行った。ラッカーゼの耐熱性を評価するため、ジメトキシフェノールの分解反応の温度依存性を調べた結果、ナノポーラスAuに固定したラッカーゼは未固定のラッカーゼに比べより高い温度でも活性を保持していた。さらに、SAM修飾をしたナノポーラスAuに固定したラッカーゼでは、繰り返し使用に対する耐性も高くなった。このことから、40mmの孔径を有するナノポーラスAu中にラッカーゼが固定され、ラッカーゼの構造が安定化したこと、またSAM修飾によりその構造安定化がより促進されたことが推測された。それぞれのpH耐性も測定し、pH耐性の向上にもSAM修飾が有効であることをつきとめた。
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