研究概要 |
結晶は通常直線的に成長するが、ある種の結晶がゲルのような拡散律速場で成長する場合、ねじれが生じることが知られている。本研究では,物質が限定されていたねじれ成長現象を自在に発現・制御し、多様な物質におけるねじれ結晶を集積化・階層化ができるように展開するとともに、マクロなキラリティによる新規な機能開拓を目指した。23年度では、(i)サブ~シングルミクロンスケールのねじれ結晶集積体の形成と光学特性評価、(ii)有機結晶におけるねじれ形成法の確立をおこった。 テーマ(i)では、ゼラチンゲルーニクロム酸カリウム系において、ガラス基板へのディップコーティング法によって基板に沿ったサブミクロン~数マイクロメートルスケールのねじれ結晶集積体の構築に成功した。この手法により、ねじれの方位と周期をコントロールすることが可能となり、最小で400nmのユニットが6-8μmのピッチでねじれた構造が得られた。この周期構造は640nmの赤色レーザの干渉を引き起こすことが示され、ねじれ結晶のマクロなキラリティを光学制御に用いるための基礎的な知見が得られた。 テーマ(ii)では、水に不溶な有機分子結晶であるピレンによるねじれ結晶の作製とその制御法を発展させ、有機溶媒への貧溶媒の拡散にともなって有機分子結晶(ピレン)のマクロなキラリティが発現させることに成功した。これにより、ピレンのねじれ構造の詳細な観察が可能となり、ねじれ形成のメカニズムを詳細に検討した。高分子のマトリクス効果が増加し、成長のユニットが対称面をもたない傾いた形状へと変化し、成長方向に対してねじれた集積が生じることが明らかとなった。これにより、水溶液系の無機イオン性結晶に限定されていたねじれ結晶成長の制御や利用が、メカニズム面からも有機溶媒系の有機分子結晶へと広げられた。この手法を用いることで、ピレン以外にもクリサジン等の対称性の高い結晶格子をもつ分子でもねじれ形態が得られることを確認した。
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