研究概要 |
本研究は,サーボプレスによる創形加工に大気圧プラズマCVDによる超高速コーティングを導入することにより,無潤滑精密加工法を構築することを目的としたものであり,本年度は以下の成果が得られた. (1)パルスプラズによる大気圧下での超高速DLCコーティング法の開発 極短パルス電源を用いて,大気圧下でヘリウムの準安定状態を利用したプラズマを生成することによりメタンガスを分解・イオン化し,0.01~1秒の短時間で鉄鋼材料表面に耐摩耗性膜をコーティングする装置を開発した.DLCの合成にはイオンが必要なので,200V/ns以上の極めて高い電圧の立ち上がりを有する極短パルス電源を用い,10kV以上の電圧を印加して鉄鋼材料上にDLC膜を合成した. (2)超高速DLC堆積基礎過程の検討 開発したパルスプラズマCVDにより合成を行い,生成膜の結晶学的特性・機械的特性および合成速度との関連を明らかにして,工具に用いることの出来る,水素量27atm.%以下,硬さ10GPa以上のDLC膜の作製条件を導出し,実際にPW(プレスワーキング)パンチにコーティングを行った. (3)プレス・コーティングハイブ'リッド加工装置の開発 開発した大気圧超高速コーティング法をプレス加工機に搭載し,PWパンチ表面にダイヤモンド状炭素(DLC)膜をコーティングするハイブリッド加工装置を試作した.パンチの平行部にHeをキャリアガスとして原料ガスを流入させ,パンチと円盤状対向電極との間で極短パルス放電プラズマを発生させて,パンチ平行部にDLCを合成するシステムである.前述の(1),(2)の成果を基に打抜き速度に同期する放電発生を試み,Heガス雰囲気で1分間に50回の放電を可能にした.安全上可燃性ガスを導入することを慎重に行っており,安全を確認して逐次CH4ガスを導入することで,1分間に約1回の速度となるがDLCコーティングが可能であることを示した.
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