カーボンナノチューブ(CNT)は優れた電気特性と機械的性質を有するナノ物質であり、望みのマイクロ構造体に集積できれば、その特異機能を、様々な応用に活かすことができる。しかしながら、CNT間の分子間力は極めて大きく、一般にCNTの液体化や輸送・集積化は難しい。本研究では独立分散CNTの自己集積化に着目し、この現象を3次元空間に拡張できれば、オンデマンドなCNTの自己集積化、並びにそれによるマイクロ構造体の自由造形が可能になると着想した。本研究ではこのコンセプトの具現化を目的に、マイクロディスペンス技術との融合した新しいCNT集積・構造化技術の開発を試みる。本年度はまず独立分散させたCNTの固液界面制御によるCNT自己集積に関する検討を行った。これは二つの溶媒の混合過程における界面状態の動的変化を利用するものである。CNTの独立分散化にはコロイド化学的作用だけでなく、効果的な物理的作用も不可欠である。ビーズ超音波法による高効率なCNT独立分散法を活用するとともに、vis-Nir分光等から独立分散性を評価した。さらに、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等による界面安定化と静電反発力によってCNTの高濃度分散液を得た。このCNT水溶液を別の溶媒に注入し、このときに生じる界面の動的変化を利用してCNT自己集積化を誘発させた。さらに、マイクロディスペンスシステムを用いて、独立分散CNTからのCNT自己集積体を基材表面に直接的に描くなど、CNTのオンデマンドパターンニング性について検討した。
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