カーボンナノチューブ(CNT)は優れた特性を有する異方性ナノ材料であり、その応用には望みのマイクロパターンや構造体に集積可能なプロセス技術が必要になる。そこで本研究では、CNTマイクロ構造体を直接描画できるようなオンデマンド性の高いCNTプロセスの開発を目的とした。具体的には、CNTコロイドの合成法を検討するとともに、CNTコロイドを自己支持可能なプリンタブルなインクとして用いることで、マイクロコイルなどのCNTマイクロ構造体の直接描画を試みた。CNTコロイドの合成において、CNTの水溶媒への可溶化に用いる界面活性剤の自己会合体に着目した。例えば、生体分子である胆汁酸ナトリウム(SDC)はCNTの水中への可能化能が極めて高いだけでなく、自己会合によりリオトロビック液晶相も形成する。このCNT-SDC系において、CNT濃度とSDCの自己会合状態をパラメータに、多様なレオロジー特性が現れた。高いせん断弾性率を有するCNTコロイドの合成も可能であり(ゲル化)、ユニークな伸長性も観察された。このCNTコロイドを用いて、トップダウン的な手法にてCNT/SDCの任意のマイクロパターンを直接描画することに成功した。さらに、このマイクロパターン化されたCNT/SDCからSDCを除去する方法も見出したことで、CNT同士が分子間力にて自己集積したCNTマイクロバターンを作製した。このCNTマイクロパターンの良好な電導性も確認した。このように、CNTと生体分子リオトロピック液晶からなるコロイドにプリンタブルなナノインクとしての可能性が示された。
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