研究概要 |
キラル分離法あるいは(化学的処理酵素的処理を伴う)不斉合成法は,医薬品製造プロセスの経済性・操作性・環境負荷を決定付ける重要なキー単位操作である.光学異性体を高度分離するために,キラル分離ならびに不斉合成のコア材料として,リボソーム,ならびに,不斉合成LIPOzymeを安定に固定化した膜モジュールを調製する.網羅的な解析データに基づいて,キラル認識の原理に迫り,同時に,大規模分離に耐えられる分離膜としての可能性を探る.初年度では,リボソームのキラル分離データベース:リボソームのキラル分離能力の系統的解析により基礎データベースを拡充することを目的とした まず,自然界に存在するL体の脂質から成るリボソーム((L)-リボソーム,と表記)を用いて,L体ならびにD体のアミノ酸のキラル分離能力を検討した.その結果,L-アミノ酸は(L)-リボソームに吸着したが,D-アミノ酸は吸着しなかった.特に,L-トリプトファンは97%吸着したが,D-トリプトファンは0%であった.さらに,L-/D-トリプトファン等モル混合溶液(ラセミ体)の光学分割にも成功した.アミノ酸吸着機構を検討した結果,静電的/疎水的相互作用,水素結合,ならびに不正炭素の配置が鍵であることが示唆された。また,吸着アミノ酸は脂質膜表面を流動化すると脱離することが確認され,分離プロセスとしての応用も可能であることが分かった.本萌芽技術は特許出願している 2年目以降,不斉合成LIPOzyme : LIPOzyme触媒との組合せによるエナンチオ選択的な化学変換(酸化・還元・加水分解ほか)手法に関する基礎的なデータを集積する.さらに,3年目では,光学分割LIPOzyme膜モジュール:既存の独自技術であるリボソーム固定化膜モジュールを用いて,モジュール内部に上記LIPOzymeを固定化し,モジュール性能を検証する予定である
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