疎水性のリポソーム膜内に親水性のDNAを導入するため、DNAの末端に疎水性の官能基を付与したDNA界面活性剤を合成した。POPC (1-Palmitoyl-2-Oleoyl-sn-Glycero-3-Phosphocholine)からなるリポソーム(直径200nm)を薄膜法により作成した。リポソーム溶液とDNA界面活性剤溶液を室温で混合した後、互いに相補的な塩基配列を有するDNA-taggedリポソーム(DNA鎖80本/リポソーム1個)を混同すると、直ちにリポソームは会合体を形成し、溶液は強く白濁した。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、個々のリポソームがナノ構造を維持したまま会合していることが明らかとなった。リポソーム会合はこれまでにも多数報告されており、その多くが静電的相互作用あるいは糖認識タンパク質と糖脂質の相互作用を利用している。これら既往の研究と比べ、DNAを接着素子とした本研究の場合には、その接着素子の多様性から、リポソーム会合に選択性を付与可能であると期待される。本研究ではさらに蛍光色素内包リポソームを用いて検討した。相補鎖との特異的結合能を有するDNAが接着素子として機能し会合体が形成される場合、蛍光顕微鏡により緑(Ca^<2+>/Fluo-3)と赤(ローダミン)の会合体が独立して観察されると考えた。その結果、緑および赤で色分けされた会合体が蛍光顕微鏡より観測された。リポソームの大きさが200nm前後であり、観測された会合体の大きさが数十μmであることを考えると、この結果はDNAを接着素子とすることでリポソームの選択的会合が達成されていることを示唆している。
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