昨年度、銅-フェライトが、光照射がなくても有機物の酸化分解に効果があることを見出したが、反応溶液を詳細に分析したところ、触媒から溶出した鉄イオンや銅イオンが、分解に大きく寄与していることがわかった。そのため、イオンがなるべく溶出しない条件において、光を照射し、分解性を検討した。フェライト触媒を850℃で焼成し、より安定な結晶化を行ったところ、焼成によって触媒粒子が大きくなり、触媒効果が見られなかった。一方、pHをより高くし、中性付近にしたところ、イオンの溶出量が飛躍的に抑制されたが、分解は進行し、触媒の効果が見られた。 中性付近で分解を進行させることができれば、分解処理後にpH調整をする必要がなく、大きなメリットとなる。そのため、初期pH=6として、より分解できる条件の検討を行った。完全酸化分解率と直接関係する全有機炭素(TOC)濃度を分析し、分解活性の指標とした。光源としては、100Wの高圧水銀ランプを用い、ビーカーの中心に冷却管とともにセットした。触媒および過酸化水素を投入し、pH調整後、光照射を行うことで反応を開始させた。反応開始後、pH調整を行わなかった場合は、3時間後にはpHが4以下まで低下していた。TOC濃度の低下を、反応開始後もpHを6程度に調整した場合と比較したところ、反応中もpHを6程度に調整した方がTOC濃度の低下が大きく、pH=6付近の方が分解も促進されることがわかった。触媒濃度の影響を検討したところ、触媒が多すぎても光の遮蔽効果が出てしまい、分解が進行しないこともわかった。最も分解が進行したのは、銅フェライト触媒を125mg/L投入した場合で、100mg/Lのフェノールを3時間処理することによって炭素基準で90%以上CO2まで酸化分解することに成功した。 本研究において、上記の成果に加え、水中の銅イオンがフェントン酸化を促進し、UVを照射しなくてもフェノールの無機化率を大きく向上させる効果があることも明らかにした。
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