ゾルーゲル法によりチタンテトライソプロポキシドの加水分解及び重縮合で酸化チタンナノ粒子が形成される際に、トリチウム標識化合物を加えておくことで、トリチウムを含む酸化チタンナノ粒子を調製した。一例として、3H-ATPを用いた結果を示す。3H-ATPを用いて調製した酸化チタンナノ粒子は、撹拌式セルにYM-100またはYM-10フィルターを使用し、順に限外ろ過を5回行い未反応の3H-ATPを取り除き、最終的に1.2mlの水分散液を得た。その放射能濃度は、液体シンチレータを用いて測定し3442Bq/0.1mlであった。対照実験として3H-ATPを含まない酸化チタンナノ粒子を調製し、同様の限外ろ過を行い水分散液を得た。その放射能濃度は18Bq/0.1mlであった。同様の方法で3H-Methionineを使用しても186Bq/0.1mlの放射能濃度を有する酸化チタンナノ粒子を得ることができた。よって、β線放出核種であるトリチウムを含む酸化チタンナノ粒子を調製することができた。次に、トリチウムが酸化チタンナノ粒子内部に固定されているかについて、非放射性の酸化チタンナノ粒子との光酸化電流の比較から検討した。1cm^2程度の透明電極(ITO)上にそれぞれ0.2ml塗布乾燥して修飾電極として0.1M硫酸ナトリウム水溶液中で犠牲剤なしの条件で透明セルにセットして500W Xeランプを照射して両者の光酸化電流値を比較した。その結果、非放射性の酸化チタンナノ粒子では約0.6μA、トゾチウム酸化チタンナノ粒子では6.6μAの光酸化電流が観測された。また、非放射性の試料に、上からトリチウム標識化合物370kBq/10μlを塗布して乾燥後、光酸化電流を測定すると2μAに増加しβ線の効果は認められたが、6.6μAよりも低かったため、トリチウムは酸化チタンナノ粒子内部に固定されていることが示唆された。
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