研究概要 |
医学分野でナノバクテリアは各種疾患との関連が示唆され注目されているが、生物であるか無生物(結晶)であるか確定されておらず、未解明な部分が多い。しかしながら近年、ナノバクテリアはタンパク質と無機物の相互作用により生成した結晶(NBC)であるという報告(1)がなされ、現在、結晶説が有力視されている。本研究では申請者が独自に見出した、細胞バンク登録株中に共存している数百nmのサイズを有するナノバクテリア(NBP)を研究対象に、NBCとの比較を含め、培養特性の解析と高濃度培養法の開発を試みた。既報(1)に従いNBCを作成した結果、NBPと類似した形態、成分を有していた。しかし、継代培養を繰り返すとNBPは単体で増殖したが、NBCは数十μmの集塊を形成した。NBCとNBPを種々比較した結果、(a)NBCにない生物構造がNBP内部で観察された、(b)血清等培地成分の違いによりNBPの増殖が促進されたが、NBCは増加量が変化しなかった、(c)模擬微小重力培養により、NBPは増殖が促進されたが、NBCの増加量は変化しなかった、(d)NBPとNBCで、抗生物質に対するMIC値が異なった、など両者は異なる性質を有しており、結晶説ではNBPを十分に説明できない事が示された。両者の特性の違いを活用することで、NBPとNBCが混合した状態で、個々の濃度の推算が可能となった。また、NBPの長期間保存法と迅速検出法を開発した。国内外のナノバクテリア研究で用いられている試料には、NBPとNBCが混在したものがあるのではないかと考え、NBPとNBCの混合培養を検討した結果、NBPの増殖が抑えられ、NBCが優先化して増加することが明らかとなった。本研究で得られた種々の知見は、今後、ナノバクテリアの諸特性の解析を行う上で重要性が高い。(1) PNAS, 105, 5549 (2008).
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