本年度では金属液体として、金属ガリウムを使用し、分散させる強磁性粒子には数百nmの粒子径で温度の上昇とともに飽和磁化が低下する感温性がある鉄合金粒子をシリカ被覆してガリウムに分散させやすくして使用した。 強磁性粒子の合成方法は、第一鉄を主成分とし、ニオブ、バナジウムを含有する酸性水溶液にアルカウ性の水素化ホウ素ナトリウムを添加することによりこれらの金属イオンを還元して作成した。合成した粒子の組成をICP-OES装置で分析したところ、鉄、ニオブ、バナジウム、ホウ素の原子比率は80:3:4:13のFeNbVB粒子であった。金属鉄はガリウムと反応しやすいので、ガリウムと親和性の高いシリカを合成した鉄合金粒子に被覆する。テトラエトキシシランを加水分解・脱水縮合反応させることによりシリカを鉄合金粒子に被覆した。シリカ被覆前後のFeNbVB粒子の飽和磁化を試料振動型磁化測定装置(VSM)により測定した。室温300K付近では鉄合金粒子の飽和磁化は0.72Tであるが、非磁性のシリカを被覆すると飽和磁化は0.50Tと低下し、約10nmのシリカが被覆されていると考えられる。 ついで、シリカ被覆した鉄合金粒子をガリウムに添加して分散させて流体を製造した。金属ガリウム中に微細シリカ粒子を約1%添加するとガリウムの融点は低下し、293Kでも長時間、金属ガリウムは液体状態を保持した。また、ガリウム中に3%程度の本粒子径の鉄合金粒子を分散させると、流体は外力でやわらかく変形するゲル状になった。電磁石中で0.59Tの磁束密度を作用させ3x10-3kgの金属流体を重力に逆らって移動させることができた。磁界中での流体の粘度変化が少ないので、応用として磁界の印加でオン位置とオフ位置を移動できるスイッチとしての応用が期待される。
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