研究概要 |
本申請研究は、Rb-Sr年代測定法を用いて花崗岩等の結晶質岩盤中の透水性割れ目の形成年代と寿命を明らかにすることを目的として実施している。とくに、結晶質岩盤中の割れ目形成・寿命に年代軸を入れるための手法として、方解石などの割れ目充填鉱物中のルビジウム-ストロンチウム同位体を用いた年代測定法を用いた研究を展開してきている。この手法を用いる理由は、これまでの実績から1mg以下の少量試料での年代測定が実施でき、かつ非常に感度がよく数10万年オーダーでの年代測定・解析が可能であることによる。 初年度の研究期間内においては、これまでの透水性割れ目の知見を基に化学的手法による時間軸を加え、透水性割れ目の形成年代・寿命を明らかにする上で。岩盤中の割れ目(帯)構造・形態には、いくつかのグループが存在することを示すことができた。とくに割れ目(帯)内部には、構造運動によって形成された空隙中に、流体との反応によって二次的に生じた充填鉱物の形成が認められることを示すことができた(Nishimoto & Yoshida, 2010 : Lithos)。このように充填鉱物は、割れ目形成期の流体に関する情報(成分、温度、圧力など)を保持していると考えられ、割れ目発達史モデルを検証する上で重要な情報となることを示すものである。さらに充填鉱物には炭酸塩鉱物が多く、この鉱物の成分を詳しく解析することによって、割れ目形成の年代や流体との反応時期、活動期間、そして最終的には割れ目の寿命も推定することが可能になると思われる。それら割れ目充填鉱物の地球化学的および鉱物学的調査と年代測定を主体に23年度は実施する予定としている。
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