研究概要 |
地層処分システムの設計では,廃棄体の崩壊熱による人工バリア等の変質を抑えるように廃棄体の定置間隔を定める必要がある。本研究は,処分場管理期間(100年以上)における通気に起因した不飽和帯の形成,およびその再冠水までの廃棄体発熱量の減衰を考慮し,廃棄体の定置間隔のより精緻な設計手法を提示することを目的とする。本年度は,固相を伴う系において水相への気相の溶存速度を閉鎖系の実験装置において求め,その値から気相の総括物質移動係数を評価した。そして,昨年度の流動を伴う系(流動系)での評価結果との比較を試みた。 (1)固相共存下,閉鎖系における気液界面の総括物質移動係数の評価 昨年度と同様の充填層および岩石試料を用いて,流体が流出しない状態において総括物質移動係数を評価した。その結果,充填層において,気液界面の形状は充填粒子によって異なるものの,総括物質移動係数の値は,ケイ砂を用いた場合,2.0×10^<-6>m/s~8.0×10^<-6>m/sにあり,ガラス粒子の場合にほぼ一致した。また,マイクロモックアップ法の場合も総括物質移動係数も上述の値とほぼ同様となった。これらの値は,昨年度の流動系の実験結果(1.0×10^<-6>m/s~1.0×10^<-5>m/s)と一致する。 (2)気液界面における総括物質移動係数に及ぼす表面電位の影響 亀裂幅を変更することより検討した結果,総括物質移動係数の値に及ぼす亀裂幅の影響は小さいことから,岩石の表面電位の影響は無視でき,気液界面の形成の違いから見かけ上の溶存速度が異なることが明らかになった。 (3)気相の溶存速度を考慮した物質移動モデルの構築 気液界面の移動および液相における溶存気相の濃度分布を表す数学モデルを作成した。その計算値は実験値をよく表すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
固相存在下における気液界面の物質移動の評価手法はこれまでなかったが,異なる手法から求めた気液間の総括物質移動係数はほぼ一致し,解析モデルもそれら実験値をよく表すことから,提案した流動系および閉鎖系の双方の手法が,固相共存下における気液界面の物質移動の評価手法として活用できることが明らかになった。何れの評価手法も同程度に有効性が認められたことは当初の計画以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで二酸化炭素を模擬気相として用いてきたが,次年度は酸素を用い,その場合の総括物質移動係数を求める。得られた値をRanz-Marshallの式(物質移動係数と流動との関係を表す式)により整理し,異なる気体から得られた総括物質移動係数でも,固相存在下のように液相の混合が物質移動を制限する場合,統一的に表し得るかを検討する。これらの整理を基に,不飽和流動場における再冠水に要する期間を算出し,従来の検討に比較してより多くの廃棄体を所定面積の処分場に定置できることを示す。
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