研究課題/領域番号 |
22656211
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
石川 厚 信州大学, 理学部, 准教授 (40242713)
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研究分担者 |
大木 寛 信州大学, 理学部, 教授 (60241783)
吉野 和夫 信州大学, 理学部, 教授 (70143964)
成田 進 信州大学, 繊維学部, 教授 (10208085)
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キーワード | 同位体科学 |
研究概要 |
【概要】同位体濃縮のための新しい化学プロセスを考案し、リチウム同位体に適用した。新しいプロセスはイオン交換カラムからのリチウムイオンの溶出を2段階で行う。初めの溶出ピークにリチウム7を濃縮させ、続いて別の溶離液でリチウム6を集める。溶離液を切り替えるだけで同位体濃縮物を分取できるので、多段濃縮工程の素過程にふさわしいと考えている。リチウムイオンの段階的溶出の機構を調べる目的で、実験例1のイオン交換平衡実験をおこなった。新しいプロセスの適用範囲を広げる目的で実験例2も行った。実験例1とは異なる分離原理でリチウム同位体分離実験をおこなった。先にリチウム7を溶出してリチウム6を後に溶出する、あるいは、逆にリチウム6を先に溶出してリチウム7を後に溶出する制御の可能性を調べた。 【実験例1】リチウム型ゼオライトについて、イオン交換等温線とイオン交換選択係数の測定を行った。メチルアンモニウムあるいはエチルアンモニウムとイオン交換させたところ、リチウムイオンの一部のみがイオン交換した。リチウムイオンの部分的イオン交換はゼオライトのイオン交換サイトの構造に原因する可能性が考えられた。新プロセスの溶離剤に使える陽イオンが分かった。 【実験例2】クラウンエーテル樹脂担持シリカビーズ(東京工大原子炉工学研究所製造)と陽イオン交換樹脂とを混合してカラム実験を行った。まず、塩化リチウムを塩酸に溶解し、これを供給液とし塩化リチウムをカラムに吸着させた。次に、カラムの上下を反転させ、リチウムの溶離剤として水をカラムに供給したところ、塩化リチウムの一部が溶離し、わずかながらリチウム6の濃縮を得た。続いて希塩酸で溶離したところ、残りのリチウムイオンすべてが溶離し、溶出液にリチウム7の濃縮が得られた。同位体の溶出順序は昨年度の実験結果と逆であり、反転法で制御可能と分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リチウム同位体の溶出を2段階で行えることが実験的に確定した。初めの溶出ピークにリチウム7を濃縮させ、続いて別の溶離液でリチウム6を集める。あるいは逆に、リチウム6を先に溶出させ、続いて別の溶離液でリチウム7を分取することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の新プロセスが可能である状況をさらに研究する。リチウム同位体の濃縮および段階溶出の機構解明が課題である。その推進方策としてはリチウムの吸着時と溶出時を分けて、それぞれを別々に研究すべきことが分かった。吸着時では、カラム内部のリチウム同位体の分布状況を溶離曲線のカーブフィッティングから調べ同位体濃縮効果を調べる。溶出時では部分イオン交換を可能にしているイオン交換体の状況をイオン交換平衡実験から調べる。
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