MOX(UO_2-PuO_2固溶体)およびプルトニウム酸化物の融点は、従来のウラン酸化物の測定に習い、金属製カプセルに試料を封入し、一定速度での加熱中、あるいは融解後の冷却中で現れる熱停留点を測定することで決定されてきた(サーマルアレスト法)。ところが、Puの含有量が多くなると、金属カプセルとPuの反応が融点付近で生じるため、それらの融点測定の信頼性が問題となっていた。そこで本研究では、金属カプセルを必要とせず、極めて短い時間で融点測定が可能となるレーザー加熱融点測定装置の開発に取り組んだ。 融点測定装置として、スポット径φ1-2mm程度に集光可能なYAGレーザー、融解後の試料の温度変化を高速で捉えるための赤外線放射温度計(応答速度6μs、最高温度3500℃まで測定可能)、融解状態を可視化するための高速度CCDカメラを光学テーブル上に配置した。また、不安定試料(Pu酸化物など)の化学状態に変化を与えないよう測定雰囲気を調節するためのガス置換型試料セルを設計・作製した。更に、レーザー照射装置からのトリガー信号・強度、放射温度計からの温度データ、CCDカメラからの画像データを一度に取り込めるようなデータ取得システムを構築した。 レーザー加熱融点測定装置に対して、ニッケル(融点1455℃)を測定試料とし、システムの性能評価を行なった。その結果、高速な温度データの取り込み、融解状態の観察が可能であることを確認した。理想的なサーマルアレストポイントでは、液相から固相へ相変態する際に試料温度が一定時間等温になるのが観察されるが、今回は降温速度に変化が現れる程度にとどまった。レーザー強度および照射時間を増加させる等の改善が必要との感触を得た。
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