本研究では光合成に類似した2段の励起で、光起電力を生じる新しい無機-有機材料の接合を利用した人工光合成型太陽光電池の開発を行うことを目的とする。従来の太陽電池と異なり、本研究では無機半導体と有機色素間での電子授受を利用して、大きな起電力の発生が可能なZスキーム型の光起電力の発生と電力の発生を行なう。1年目に電解析出したZnOを核として水熱合成法で調製したZnO電極はキセノンランプに対して0.5V程度の大きな起電力を示すことを見出したので、2年目は色素に注力して検討を行った。 種々の色素について検討を行ったところ、昨年度、見出したフタロシアニンCuに加えて、いくつかの色素で良好な光電流が流せることが分かった。とくに検討した色素では2アミノアントラキノンが比較的、大きな光電流と、.光起電力を示すことを見出した。しかしながら、この2アミノアントラキノンは1V vs.NHEに色素の酸化還元電位があり、色素が酸化分解されることが分かった。そこで、安定性に課題があり、太陽電池への応用においては課題があった。一方、Cuポルフィリンについて、金属の修飾効果を検討した。種々の金属の修飾効果を検討したところ、修飾方法として、スパッタ法に比較し、単純な蒸発乾固法で金属を修飾することが有効であり、とくにIrの修飾が最も有望であった。この結果、Ir修飾Cuポルフィリンにおいて、1V印加時に100μA/cm^2という比較的大きな電流を引き出せることが可能となった。ZnO電極とIr修飾Cuポルフィリンでは、起電力として0.7V程度が達成可能であり、電流は1mA/cm^2程度と昨年度より向上することができた。色素の抵抗が大きく、色素の伝導度の向上が今後の課題であり、酸化還元対や色素の複合化による色素電極の特性向上を行う必要があることがわかった。
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