研究概要 |
太陽エネルギーが豊富で,広範かつ平坦な土地に適している次世代のクリーンで再生可能なエネルギー供給システムとして,J.Schlaichが発案したソーラチムニーが注目されている.このシステムは,透光性の集熱部で地表面の空気を太陽熱により加熱し,集熱部中央に高くそびえ立つ風路塔内部に熱上昇風を誘起することで,風路塔下部に設置している風力タービンを駆動して発電するシステムである.1982年から7年間100kW級のパイロットプラントをスペインで試運転し,50kWの発電に成功しているほか,オーストラリアのEnviroMission社ではソーラタワープロジェクトと称して20万世帯分の電力を供給する太陽熱発電所(200MW級)を検討している.本研究では,風路塔形状にディフューザ形状を適用した場合,ソーラチムニーやソーラタワーで適用している円筒形状の場合よりも速い熱上昇風が風路塔下部に誘起されることを室内実験及び数値解析により立証した.評価条件は,昼間で構造体外部の一般風を微小と仮定し,太陽熱により熱上昇風が風路塔内部に誘起して上空へ流出する状況とする.太陽熱により加熱された地表面と周囲との温度差が30℃である条件下にVT-WCONVS (Vertical Type-Wind CONVergence Structure)を設置することを模擬した室内実験及び数値解析を行った.その結果,円筒型風路塔モデルに比べディフューザ型風路塔モデルでは約1.4~1.5倍の速い上昇流速を風路塔下部に得た.VT-WCONVSの風路塔に円筒形状ではなくディフューザ形状を適用した場合に得る創風性能の向上は,風路塔下部のスロート近傍を低圧にすることが起因する.風速の3乗則によるとディフューザ型風路塔を適用したVT-WCONVSは,円筒型風路塔を適用するより約2.7~3.4倍の風力エネルギを集束することが期待される.
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